未来に放たれた希望~男子バスケットボール日本代表~
アルゼンチン選手が笑顔で握手を求めてくる。
苦しそうに握り返す選手たち。
渡邊はユニホームで顔を覆い、真っ白なタオルを被った。
同時に、日本代表のオリンピックが終わった。
7月26日のスペイン戦を皮切りに、日本バスケ界は1週間熱狂の渦だった。
そして、選手たちは夢の予選リーグ突破、悲願の1勝を目指してコートを駆け回った。
だが、無情にも世界の壁は高かった。
スピード、パワー、高さ。
シュート精度、判断の的確さ、メンタル的な余裕。
全てにおいて、日本を上回っていた。
それは20点差、30点差のスコアからも見て取ることができる。
では、世界との距離は縮まっていないのか?
離されていく一方なのか?
否、世界との距離は詰まりつつある。
八村は1試合で34点を叩き出した。
これは予選全体2位の個人得点ランキングである。
また、渡邊雄太もOF、DFの軸として3試合通じて高いパフォーマンスを披露した。
何より、彼の最後まで諦めない泥臭いプレーは胸を打つものがあった。
日本代表が1番大事にしなければならないものを、彼は体現してくれたと思う。
2人のNBAプレーヤー以外の選手たちのレベルアップとともに、若いプレーヤーが駆け上がってくれば、日本全体のレベルが上がっていくだろう。
今大会の日本代表の活躍により、若い選手たちは自然と世界を意識するようになる。
世界標準が当たり前の時代になっていくのではないだろうか。
サッカー五輪代表のように。
1998年、サッカー日本代表がW杯初出場時は3連敗だった。
初めて知る、世界。
世界に跳ね返された大会だった。
そこから多くの選手が「世界」を意識したことで、日本サッカーは大きな発展を遂げた。
同大会に出場している久保、堂安、富安などは「世界が当たり前」の世代になっている。
海外組の彼らにとっては世界が日常であり、コンプレックスなど皆無である。
今後、日本バスケも海外組が増え、世界標準が当たり前になっていくことに期待したい。
シェファー、富永、河村。日本にも逸材は揃っている。
東京五輪は終わった。ここから、未来にボールは放たれる。
4年後、パリ大会への笛はもう鳴っている。